「詩のこころを読む」
茨木のり子 著

道草編

先に書いたように,小学生から中学生になるころから音楽という永久の思い人を得てしまったので,あまり詩作(中学生のそれですから思い出すたび穴に入りたくなる)ということをしなくなってしまいましたが,中年になってこの本を偶々手に取ってからは,人気のない山の中で陶然とフォーレを聞きながら黒田三郎の「ひとりの女に」とか「夕方の三十分」という詩を陶然と頭の中で読み返すようになりました。ナパの赤ワインを陶然と飲みながら(下手な韻を踏みました:笑)。
茨木のり子は,詩人でもあるのですが,医者の娘という育ちの良さと頭の良さとが災いして詩作そのものは100年は持たない気がしますが(死者に対する侮辱ではありません),彼女の書いた他人の詩又は詩人に関するアンソロジーというべきものは,自信を持って日本語が続く限り読み継がれるだろうなと言うことができます。
この本に啓発されて,吉野弘,岡真史,黒田三郎,高良留美子,滝口雅子,岸田衿子,川崎洋,石垣りんその他の詩人も含め本棚2段分以上の著作を買い集めました。詩の大好きな人たちからは「てんで遅れている」と言われそうですが(笑)。まあ,大学生の頃は世界詩集全書などを買ってはみましたがまともに読んではいないのです。
この著書は「岩波ジュニア新書」から出版されているものですから中学生向きに書かれた本のようですが,1979年に出版され2012年には増刷73刷目が発行されているように,中学高校生だけに読ませるのはもったいない本です。
大人である貴方に自信を持ってお勧めしましょう。