道草 クロスオーバー

歌手編
クラシックの歌手が地声で通俗歌謡を歌う編

20年近く前,これに一時嵌まったことがある。

歌手の名前を挙げると以下の通り。
但し,どれもこれも名曲だから youtube に up されているものは皆音質を落としている。
一応,どの歌手もクラシック歌手としてのキャリアに敬意を表して,クラシックも含めた。但し,ジェンキンズのように既にクラシック歌手とはいえないような歌手もいる。

□ Katherine Jenkins
純クラシックの曲を探すのに苦労した。
とりあえずこれ↓
Samuel Barber: Agnus Dei, Op. 11

いわずとしれたバーバーの弦楽四重奏曲の声楽アレンジ版である。但し,この曲の名演はいくらでもある。
例えば,ルッターが指揮している
John Rutter, The Cambridge Singers

彼女のアルバムで最も出来が良いと思ったのはこれ↓である。但し,最近のものは聞いていない。
Album: Sacred Arias
そのうちのいくつかを拾った。但し,別のアルバム収録のものもある。
Panis Angelicus
Abide With Me
Pie Jesu (from “Requiem”)
The Lord is My Shepherd
May The Good Lord Bless And Keep You
どうも私の幼い頃,キリスト教の牧師に接触していたせいか(近くに教会もあります),こういうキリスト教徒が言祝ぐ曲に弱いらしい。但し,今では罰当たりの無神論者ですが。
もちろん彼女の演奏の中では最高なのも間違いない。

但し,クロスオーバーの歌手のCDで彼女のものが一番多いがそのうち飽きてしまった。
大体,私は声でシャンデリアを割ることができるわと自慢を言う人柄が鼻持ちならなくなくなった(笑)。演奏も雑になってきたし。

□ Renée Fleming
R Strauss “Morgen”
この恐ろしく繊細な曲は誰が演奏すべきか。
彼女のモルゲンは私の中では4~5本の一角を占める。
もう二人は以下のとおり。
Barbara Bonney
Dietrich Fischer-Dieskau
3人目 Arleen Auger は既出です。
4人目を加えるとこの方↓
Janet Baker
by Gerald Moore
但し,録音最低です。EMI の CDも同じ。録音が古すぎるのでしょうか。Gerald Moore の piano の音(この曲を評して「壊れものにつき、取扱注意」とムーアが述べたことでも有名です。)はよく聞こえますが(苦笑)。

中江早希
驚いた。我が邦にこの曲をこんなに旨く歌う若手がいたとは。但し,楽器が宜しくない。
    この歌手のマリエッタリードも悪くない。
どうもシュトラウスを得意としているのか。

本来この詩だと男性歌手が歌うべきものだと思うのだが芳しい演奏がない。フィッシャーディスカウ&ムーアの演奏も録音が良くない。

しかして,モルゲンもマリエッタリードにしろ指を回すといった技術は簡単である。ボーカルは高音hが出てくるなど素人には手に負えないが,そのような点を除くと「簡単」である。でも,こういう簡単に見える曲を生み出すことにしろ演奏することにしろ容易でないところが摩訶不思議で興味深いところだ。
人類が生き残る限り演奏され続けるに違いない。

カラオケ版
KMP MUSIC
さすが名曲中の名曲だからカラオケもいっぱいある。そのうちの一等賞がこれでしょう。
そこのあなたもどうぞ(笑)

また,彼女はフォーレなんかを歌わせても達者なものである。フレミング流フォーレになっている(笑)。但し,フランス語の発音は怪しい(笑)。
Rêve d’amour, Op.5

但し,この歌手もクラシック歌手よりはジャズ歌手の方がより似合うだろうという感じがする。
例えば,この曲↓を初めて聴いたときは背筋がぞくぞくしたものだ。
Haunted Heart
言うまでもなく Fred Hersch の名曲。

これも良いな。
You’ll Never Know
Alexandre Desplat(composer)

但し,音質を落として up しているようであるから是非 CD を入手してください。なお,このアルバムの他の曲はぱっとしないが(笑)。

□ Anne Sofie von Otter
私は,彼女の学校の先生的なところが気に入っている(笑)。演奏を聴いているだけで頭の良さがひしひしと伝わってくるし。

ベストの曲はいくらもあるがクラシックではこれかな。あの Marietta’s Lied である。ほとんどハリウッドの映画音楽というかその元祖である。
Korngold: Die tote Stadt

    こちらもよい。
    Erich Leinsdorf
    René Kollo
    Carol Neblett
    グリア・ガースンに似ている(笑)Carol Neblett が文句なくうまい。

オペラのアリアである。死んだ女(女房)とそっくりの女(あばずれ)との間で引き裂かれる哀れな男の物語と書くと身も蓋もないか(笑)

世俗歌謡のおすすめはいくらもあるが。シャンソンを歌わせても文句なく上手い。
Avec le temps
Composer: Léo Ferré の名曲である。
 Love songs というアルバムは2枚組であるが文句なく良いできである。2枚目はいずれも(確か:笑)pianoの Brad Mehldau の作曲した曲であるが悪くない。
Pierre
Dis, quand reviendras-tu ?
Göttingen
I Let The Music Speak
ABBAのような自国の曲↑も上手い。
Chanson des vieux amants
Andersson: Like An Angel
The Winner takes it all

□ その他歌手
Vocalise
Rachmaninov
by Sabine Devieilhe
この曲も映画音楽に使われてますよね。
ザビーネの演奏はあまり良くない。まあ,見てくれで選びました(笑)
ラフマニノフに申し分けない。

Natalie Dessay
やはり,こっちがラフマニノフに相応しい。

La javanaise
by Melody Gardot
久しぶりでノンクラシックで聞きたいという歌手が見つかった。
シンガーソングライターだ。この曲も彼女の作曲。
ジャズ歌手に分類しているものもあるがどうであろう。
wiki によれば交通事故で頭部外傷その他満身創痍で8年間も入院していたらしい。今も後遺障害は残っていて,大きな声を出すのが体に良くないそうな。彼女には気の毒だが,アルトで柔らかくボサノバ歌手みたいな声で歌う。ぞくぞくするね(笑)
André Manoukian の piano も素晴らしい。

Azulao
Artist: Bryan Epperson
Artist: David Hetherington
Artist: Isabel Bayrakdarian
Composer: Jaime Ovalle  1894年8月5日 – 1955年9月9日
この曲はアリーンの Love songs にも載っている。
この曲をクロスオーバーというべきかは問題があるが名曲だし,世界中の歌手が歌っている。この作曲者は独学の公務員(ブラジル財務省の高級官僚だった)なんて。音楽の才能には音大は関係が無いな。
シャント Isabel Bayrakdarian は,著名なアメリカのオペラ歌手。Lebanese-born Canadian operatic soprano of Armenian descent(wiki) 地声で歌っている?色黒でケバイ顔立ちは白人系ではないからか。でも,好きですね。暖かい声が非常に良いな。と,思って”Azulao”というアルバムを手に入れた。でも,外の曲は退屈です(笑)。

    Gérard Souzay, Dalton Baldwin
やっぱりスゼーとボールドウィンの二人は上手いな。

□ Piano 編
Mariage d’Amour
by LOLA ASTANOVA
この曲ならば,アマチュアピアニストでも楽々弾けるでしょう。無料の譜がサイトに転がっています。
作曲者の Paul de Senneville は,ライトミュージックの世界では有名人のようです。知らなかった。
但し,ライトミュージック+半裸の演奏家だと,クロスオーバーにもならないような気が(笑)
もっとも,クラシックの演奏家でも半裸の演奏家は一杯いますからね。
うーん,LOLA ASTANOVA の他の演奏もざっと聴きましたがどうだろ。彼女はかなりな有名人のようですが,演奏技術にも難があり,また,この演奏を除き深く聞かせるような演奏をしているとは思えませんね。
まあ,良くあること。

Liebestraum No. 3
Franz Liszt
by Khatia Buniatishvili
これをクロスオーバーなどというと怒る人がたくさんいると思う。
でもこの曲って,クラシックにまるで無知な人に聞かせたら絶対「映画音楽」て言うよね。まあ,中間部に超絶技巧的なものがあるのはリストらしいが。
この曲を演奏するならこの人ですよね。ほとんど見てくれも映画女優ですね。
演奏の腕前は?言わない,言わない(^^;) 最近,この演奏家の演奏を見直した。BWV 855a (Arr. by Alexander Siloti) の演奏を聞いたのである。ひょとすると天才か。
リストと言えば,昔々,ある人(ピアノ弾き&ハーモニカ吹き)にリストのカンパネラの譜を贈って顰蹙を買ったことがある(^^;)。

Bach “Air on G String”
これも映画音楽だろ。昔,笛のアンサンブルで Vn パートを吹かされたが結構難しかった。
guiterist は音価一杯に音を伸ばすのが苦手だからこういう曲は落ちやすい。しょうもない弁解です(笑)。中学生の時に,この曲に相応しい楽器も持っていない(ギターとトランペットじゃね)くせにこの譜だけは持っていたのに(苦笑)。
もしやと思って youtube を漁ったらプロでもこの名曲を結構いい加減に弾いている人間が多い。プロなんかやめちまえですかね。

Elegy Op.3
Rachmaninov
by Irina Lankova
映画音楽に採用されたことがあってもおかしくない曲
この曲は指が長くないと美しく弾けないらしい。
ラフマニノフは大男だったし,指も長かかった。
イリーナも背が高いよね。指も長く美しいし。指フェチです(笑)

Vyacheslav Gryaznov
こちらの演奏もすごい。よく考えられていて細部まで緻密な演奏とはこのこと。

Variation 18 Rhapsody on Themes of Paganini
Rachmaninoff
by Valentina Lisitsa
これも映画音楽ですね。
演奏者は,ウクライナ侵攻を是とする演奏家で物議を醸している(笑)
あまりたたかれないといいが。

Passacaglia – G.F. Handel
Arr. by J. Halvorsen
演奏者:不詳
この曲はヘンデルのパッサカリアの編曲であると言う者もいるが,ほとんどハルベルソンの作曲だと言う者もいる。パッサカリア(舞曲)ではなくなっているし。
    Bob van Asperen
ヘンデルを弾いている Bob van Asperen のハープシコードの演奏↑と聞き比べてください。
私にはどちらも名曲だというしかない。
演奏者は知らない。ベトナム人か。背中が美しいというだけで選んだわけではない(笑)。間違いなく芸術的な演奏だからだ。
但し,拙い指使いからすればプロのピアニストという感じはまったくしないが(笑)
やはり,同じ演奏家の up が youtube にあり,それには I’m just a medical student studying abroad in Russia と書いてあった。医者の卵がいい度胸だ(笑)。
(過去か未来の)この曲が映画音楽であることも間違いないだろう。これを映画にしたいという監督は無数にいるはずだろうから。

でも先に挙げた Mariage d’Amour は,ハルベルソンの曲とほぼ同一の曲かと思うぐらい曲想が似ている。
分析して真似れば,貴女は歴史に残る3曲目の作曲者だ(笑)

Caccini “Ave Maria”(V.Vavilov)
Hisako Nagayoshi(piano)
これも著名な映画音楽的な曲ですね。カッチーニが作曲したとされていたものですが、その実 V.Vavilov (ロシアのギタリスト・リュート奏者・作曲家1925/5/5 – 1973/11/3)が作曲したモノです。そのピアノ編曲版ですね。彼は大変に美しい旋律をいくつも書いていますが、知られることなく貧窮のうちに48歳で亡くなったそうです。彼の野心は曲に対する時と場所を超越した普遍的な名声のみだったんでしょう。現世の利益なぞはどうでもよかった。同じ楽器を愛好する者からすれば憧れの極みです。
彼の魂よ永遠なれ。

加羽沢美濃
アベ・マリアはこちらの編曲もよい。

Song From A Secret Garden
Rolf Løvland(composer)
クラシック畑の演奏者と作曲者の有名なコラボで有名な曲を。
この曲どこかで映画の主題曲になってますよね(笑)。
こういう曲まで間口を広げると収拾がつかないんですけど。まあ,いいいか(笑)

Arietta, Op.43
Paul Becker
1960年生まれのオランダの作曲者だが知らなかった。
めちゃくちゃ感傷的な曲だが悪くない。

Mahler Symphony No. 5 – Adagietto
Myung-Whun Chung
NHK Symphony Orchestra
ベニスに死すの主題曲に使われたんでしたっけ。
マーラーが妻のアルマに贈ったという有名な旋律。
結婚してからの夫婦の関係はあんまり宜しくなかったようですが。
肉食のアルマと亭主関白のマーラーという組み合わせはどうみてもまずかろう(笑)
でも,この組み合わせから人類はこの旋律を得た。もって瞑すべし。(笑)
マーラーはあまり好きじゃないんですがこの曲はしかたがない。

□ Ennio Morricone
1928年11月10日[1] – 2020年7月6日
稀代のメロディメーカー 死す
映画を見ずして作った作曲者の音楽が映画を食ってしまった。ある意味この人物も時代の音楽の流れとずれていたような気がする。
Deborah’s Theme
Cinema Paradiso
The Mission (Gabriel’s Oboe)
La casa e la giovinezza [Arr. G. Giachi]
稀代のメロディメーカーの曲は,本人や第三者の手であちこちでピアノ編曲などにされているようだ。この曲は知らなかった。
映画はほとんど見ない方なのでこの映画のあらすじなどは知らないがこれも音楽が映画を食っているに違いない。

□ John Williams
Schindler’s list
NL orchestra
ジュン・ウイリアムズ 同名のギタリストがいるので注意。
も泣かせるメロディ(映画音楽)を作ることで有名であるが,この曲などが最たるものである。
なお,このオケの演奏者のうちコール・アングレ奏者(Davida Scheffers)が最後に泣いていることでも有名である(笑)。

同フルート編曲版
by Mauro Scappini
同曲のフルート編曲版も泣かせる。もちろん不肖横笛吹きも吹いたことがある(笑)。
Mauro Scappini は,イタリアのフルーティスのようであるが,指が回るという意味ではなく旨い。

arr.N.Koshkin
Asya Selyutina guitar
更に,コシュキンの優れたギター編曲を奥方の Asya Selyutina の演奏でどうぞ。

Remo Giazotto
1910年9月4日 – 1998年8月26日
Tomaso Albinoni Adagio for Strings and Organ in G Minor
Horst Sohm 指揮
Violins: Anna Piniuta, Michał Kwaśniak, Marta Rusiniak, Ewa Żołyniak,
Aleksandra Pilarska Sabina Milewska, Katarzyna Składanek,
Violas: Magdalena Swiąder, Weronika Maniakowska,
Violoncellos: Michał Litwa, Joanna Laskowska,
Bass: Krzysztof Sypek,

アルビノーニのアダージョとして有名だった曲。でも,実はその編曲者とされていた人物 Remo Giazotto が作曲したものだと判明している。

皆さんも聞いたことがあるでしょう。但し, Giazotto は,最後まで自身はこれの編曲者にすぎんと言っていたもの。
なんでしょうね,こういう人が結構いますね。照れ?いや違うな。
レモ・ジャゾットはイタリアの音楽学者で、トマゾ・アルビノーニの系統立った作品目録を作成したことでとりわけ名高いとされていますから,アルビノーニの作品がとりわけ好きだったのでしょうね。そのうち,彼は,アルビノーニと一体化してしまった?どちらが書いたか彼の内部ではどうでもよくなった。
むしろアルビノーニが書いた名曲とされていたものが,実は別人(彼も別人だ)が書いたものだとしてアルビノーニの名声が揺らぐのに我慢ならなかったのだろう(笑)。

La Javanaise
Serge Gainsbourg(composer)
by Khatia Buniatishvili
相変わらず演奏にちょいと雑なところ,むらっけなところも見えるがこの曲にはよく合っている。

この項も続く