Liszt. Totentanz   時代に先行しすぎていた作曲家

女たらしで有名な音楽家はいくらもいるが演奏会で多数の女性客を失神させたことでも有名な作曲家。
今のロック歌手でもたくさんいますよね。それらの大先輩(笑)

Totentanz
by Valentina Lisitsa

実は,あまりリストは好きじゃない(笑)のでそんなに聞いてもいない。
なんせ演奏会では何人もの女性を失神せしめたということも,嫉妬のあまり私を敬遠させるに十分であった(笑)。

但し,彼のピアノを演奏する技術がでたらめに優れていたことの証拠は以下のようにいくらでもあるようだ。

・「指が6本あるのではないか」という噂の存在

・ショパンの「12の練習曲 作品10」(革命のエチュード)だけは初見で弾きこなすことができなかったが,数週間後に全曲を弾きこなしショパンを驚嘆させたことから,ショパンが同曲を献呈したという話

・メンデルスゾーンが自分のピアノ協奏曲を持ってリストの元を訪れたときに,リストはそれを初見で完璧に弾き,メンデルスゾーンは「人生の中で最高の演奏だった」とコメントを残したということ

・クララ・ヴィークがリストの演奏を聴いてあまりの衝撃に号泣したというエピソード

・手は広げると12度~13度くらいあった。

・演奏会でピアノが壊れることがあり,予備のピアノを用意していた。

でも,あまりに技術が優れていたので初見で弾いた曲に,いかにもオレってすごいでしょうという凄まじいアドリブを直ぐにつける。←なんか軽薄な奴(我々の周りにもいるでしょ:笑)という気もしたのだ。大体,リストのアドリブはジャズのアドリブに似ているし(笑)。

だが,彼を見直したのはこのトーテンタンツを聴いてからだ。
この曲は,聞いていて楽しいとか美しいというものでないことも間違いない(笑)が,えっと驚いたことも間違いない。
それはこの曲を聴けば分かる。
この演奏,結構。聞いている。この演奏家が大変優れているからでもあるが。

彼は,音楽の歴史を先取りしていた。「愛の夢」のような曲しか知らなかった私が驚くのはあたりまえ(笑)

「愛の夢」続編を少し(笑)
Romance, S.169 by P. Barton
これも有名ですね。私的には短調の曲の方がぴったりくる。
Auf dem Wasser zu singen
こうやって彼の作曲した曲を聴いていくと一定の法則が浮かび上がる。
メロディ優先。それに伴奏が加わるという。そしてそれらに変奏も加わる。

彼の時代は,ロマン派というべき時代(驚くなかれ,彼はブラムスより20歳年上,ドビュッシーの50歳も年上だ)なんだが,既に,調性を破壊し始めている。ひょっとしてアドリブの多様さ,支離滅裂ぶり(変幻自在)が簡単に調性を超えさせてしまったとも思えるが(笑)。
同時代では,ピアノのビルトーゾという面が強すぎて作曲家という面が見過ごされていたのであろう。
私生活では「女たらし」という評価は芸術家という面の理解を疎かにするに非常に役立っている(笑)。
技術のでたらめなうまさと女たらしという面が作曲家としての彼をスポイルしているところがある。まあ,自業自得ではあるが(笑)

でも,彼の書いていた文章を読む限りでは,非常に複雑な人間であることも浮かび上がってくる。
それにすさまじい数の作曲があり,いまだ全容が解明されているとは言いがたい。ナクソスから膨大なピアノ全集がでている。

でも,主題と変奏というべき曲があまりに多く,あんまり好きになれないな(笑)
もう,ちょっと聞いてみないと。

La Lugubre Gondola, S.200 No. 1
by Maurizio Pollini
La lugubre gondola, S. 200/R. 81 (1st Version)
by Arnaldo Cohen

2nd Version
by Claudio Colombo

調性が破壊されつつある曲
というか,ピアノで遊んでいるうちにそう指が動いたというような曲だな。
これなんか,近現代的な名曲じゃないか。彼と同時代の人間でこれだけ非調性的な曲を書いた人間は余り居ないはず。
なお,La lugubre gondola, S. 200/R. 81 は 3rd version by Jenő Jandó
まであるようだ。推敲を重ねるとは彼らしくない(笑)。しかも段々つまらなくなる(笑)。
確かに再評価が必要な。

別稿でも書いたが,ピアノ&ハーモニカ吹きにラ・カンパネラを贈って顰蹙を買ったと書いたが,あまり好きでもない作曲家の曲を 贈った原因は,ただワッツのラ・カンパネラを聴いた直後だったのでという程度の理由と同じ作曲家が「愛の夢」を書いているという暗喩に気づいて欲しかったから(笑)。但し,そんなことは想い人にはダダ漏れであったに違いない(笑)
それにその頃は今のように珍しい譜が容易に手に入る時代でもなかった。今ならビラ・ロボスのピアノ譜でも贈っていたのに。
Un Sospiro
リストなら,この甘い曲を贈るべきであったか。すくなくとも想いを寄せる娘にはこちらの方がはるかによい(笑)。

Valentina Lisitsa
冒頭の演奏家はリストのこの難曲も楽々と弾いている。どう私ってうまいでしょうという声も聞こえそう。リストに似ている(笑)。でも,アクが強すぎそう。
Consolation D flat major No.3
「愛の夢」の続編(笑)

Piano Sonata In B minor
by Claudio Arrau
デモニーシュな所はトーテンタンツに似ている。悪くはないが,相変わらず主題と変奏曲だ(笑)

6 Chants polonais de Frédéric Chopin, S.480 – 2. Spring
by Arrau
こういう曲を書いていれば,後世のえせ評論家たちからも称讚されたろうに。ただし,もう少し捻った変奏が出来れば100点満点なのに,とえせ批評家は言う(笑)。

と,頭出し(笑)