Fanny Hensel Mendelssohn
もうひとりの童顔で短命だった作曲家
この時代の大金持ちが描かせた娘の肖像画というのは信頼ができません。現に,ファニーもたくさんの美人顔の絵が転がっている。但し,たぶん普通の顔立ちが最も信頼できるという経験則(笑)からしても童顔であったことは間違いが無いようです。
童顔であったか否かが重要ではなくて(笑)彼女の作った曲ですね。私好みの美しく叙情的な曲が多いですね。
その曲の多くが,美しい旋律が特徴的ですね。その余の音はそれらを飾るために描かれているというか, piano の伴奏を背に,歌うような曲が多い。
気質的には,シューベルトの直系か。年齢は8歳違いですね。但し,片や非常に貧しい音楽家,此方はとんでもない大金持ちですから両者が出くわしたらばどうなっていたかはよくわからない。ご亭主が宮廷画家ではありましたが一般的には低く見られていた社会的地位の者を選んだわけですから,少なくともその才能を高く評価してシューベルトのパトロンになったかもですね。そしてその夫の勧めで楽曲を出版し,後世にその音楽を残してくれたのですからこの組み合わせは少なくとも東洋の一音楽オタクにとっては誠に理想的だった(笑)。
□ ピアノ曲
Allegro molto in C minor
Piano: Heather Schmidt
Melody in C sharp minor Op.4 No.2
Betty Ann Miller, piano
Notturno in G minor
Piano: Michael Landrum
Vier lieder fur das pianoforte, Op.8
Virginia Eskin, piano
Das Jahr, March
Lauma Skride(p)
Das Jahr: December
Sharon Prushansky (piano)
ファニーの曲は,こういうところで演奏するのが相応しいのかな。
但し,実際は,大銀行家の長女に産まれついた彼女は,実家の敷地にオーケストラが演奏できるくらいのホールを父から提供されていてしばしばそこで演奏し,指揮もしていたというからイメージがまったく違うな。貧乏人の想像力には限りがありますね(笑)
September (Am Flusse)
by Daniela Willimek
うーん,堪らないくらい暗くて美しいな(笑)
Das Jahr June: Serenade
Sarah Rothenberg (piano)
これも美しい。彼女が紡ぎ出すメロディを表現するのに「美しい」しかないのは情けないのですが。
January: A Dream 暗すぎ,重すぎだよ。ファニー
February: Scherzo 速すぎ,明るすぎだよ。ファニー
April やはり速すぎ,飛び跳ねすぎよ。ファニー
May: Spring Song 5月だからって。ファニー
July: Serenade 和声のお勉強したのかい。ファニー
October 明るすぎ,行進曲のようだね。ファニー
November 前記に同じだよ。ファニー
Lied in E-Flat Major
Heather Schmidt piano
この出だしのメジャーのアルペジオがマイナーのそれに転調するなんとも堪らない部分からそれに続く以降の楽章が,文句なく天才の筆ですね。
この演奏者は,ピアニスト,作曲家,作家,映画製作者,芸術家(utterly musical a great artistの意味不明:笑)及び動物救助者と多彩な分野に及ぶとんでも才人らしい。だが,妻?!がいる。いや,言うまい言うまい。良い時代になったものだ(笑)
もう,一人ファニーの演奏家↓を見つけてしまった。
Lyrische Stücke für Klavier Andante con espressioneHenle
Elzbieta Sternlicht(piano)
Klavierstück in E Minor, WV 393
Elzbieta Sternlicht(piano)
□ 室内楽
Sonata Fantasia in G Minor
Penelope Lynex(cello)
Alexander Wells(piano)
これの第一楽章は文句なく美しい!
この曲って,弟君の書いたPiano Trio No. 1 in D minor に雰囲気が大変よく似ていると思いませんか。弟が死んだのも姉の死が引き金になっていることは有名ですしそこまで似なくても(>_<)。
Piano trio in D minor, op. 11
by The Claremont Trio
String Quartet 第一楽章
同 Second Movement
同 Third Movement
同 Fourth Movement
by Attacca Quartet
第一楽章などは,ロマン派の弦楽四重奏曲の傑作の一つと言って良い。
ファニーのメロディ偏重のピアノの曲にあるように,心ばかりが先走ることもなく,構成力も優れた_あるべき音がちゃんとそこにあるという_感じの曲だ。紛れもない才能だ。
演奏も非常に優れているが楽器のせいかセロの弓で弾く音量が不足するときがある。
しかし,本当に弟になんら遜色のない弦楽四重奏曲を書いていますよね。
というか,弟が無理に古典派の形式に叙情的な心を押し込めている曲が多いのに,姉の曲は逆にロマン派らしい馥郁とした香りがしますね。
□ Lieder
Die Mainacht
Lan Rao, soprano
Micaela Gelius ,piano
ファニーの歌曲では最も美しい曲ですね。
Lan Rao のCDを1枚持ってますが,この曲の演奏がベストですね。アリーンに教えられていたこともあるのに全体を聞くとちょいと一本調子なのが気になりますが,天性声がいいとこうなるのか(笑)。
なお,香港に居住するらしいこの演奏家の無事を祈ります。
同じ詩で,Schubertも,Brahmsも,作曲してますが,ファニーのこの曲が最も暗くて(笑)好ましいと思うんですがどう思います。
Suleika, op 34, 4
Barbara Bonney
Piano: Geoffrey Parsons
我がブログでは,あまり演奏を取り上げていないと思いますが,リリカルな曲を歌うバーバラはうまいですね。
失礼、これは弟君の作品でした(笑;)
Schwanenlied” Op.1, Nr.1
Elisabeth Breuer – Sopran
Sigurd Hennemann – Klavier
Warum sind denn die Rosen so blass
Gesang: Barbara Tisler
Klavier: Mechthild Winter
Gondellied
Soprano: Lan Rao
Piano: Micaela Gelius
こう youtube を回って拾ってくるだけでも相当な名曲がある。
もう,ジェンダーの観点からいろいろ述べるような作曲家ではありませんね。
しかして短命の割に600曲も作ったというのに彼女の楽譜を手に入れようとしたら,作品番号がつけられていないし,天才の筆使いの Lied in E flat major がどこにも売っていないのだ。
□ Felix Mendelssohn
ここで弟君の作品も紹介してしまえ。
String Octet in E flat major, Op. 20
Boris Brovtsyn- viool
Julian Rachlin – viool
Julia-Maria Kretz – viool,
Vilde Frang -viool
Amihai Grosz – altviool
Lawrence Power -altviool
Jens Peter Maintz – cello
Rick Stotijn – contrabas
まちがいなく弟君の名品。↑↓2曲のピアノ三重奏曲と3峰をなす曲。
Piano Trio No. 1 in D minor
Anne Sophie Mutter
Piano: Andre Previn
Cello: Lynn Harrell
私が大好きだった曲。でも,youtubeにはたいした演奏が転がっていない。
Piano Trio No. 2 in C minor
by Trio Wanderer
□ Piano
Mendelssohn – 3 Caprices, Op. 33
by Marie-Catherine
メンデルスゾーンのピアノ曲は,あの Lieder Ohne Worte が有名すぎて(実は、ファニーの曲か)、面白くないとて(笑)、あんまり聞いていなかったが,これは名曲だ。
Andante & Allegro Brilliante Op 92
by Lucas and Arthur Jussen
これなんか例の姉弟がピアノを弾いている肖像画のとおりに、ふたりして弾いていたと窺われる曲ですな。本当かな(笑)
続く