1994年頃に書いた山歩きの原稿です。
塩原温泉の巻
塩原温泉にリゾートマンションを買うという友人を冷やかしながら、またも軟弱にも塩原温泉までハイキング程度を計画して先週の土日にぶらり。
あまり気に染まず、人の尻にくっついていっただけですが、軟弱ついでに金色夜叉をザックの片隅につっこんでと。
山筋の道は、大網温泉へのルートの始めの登りと、塩原富士への登りに汗を少しかかされたくらいで女子供でも十分であるので、途中で散々麦酒を呷りながら。8本の缶ビールをクーラーに入れて道草をしながらという具合。
予想に反して、なかなかよかった。都合6つの湯に漬かることができました。
大網温泉の露天風呂
塩分含有の湯である。よく絵葉書等に載るやつです。川の脇に湯船が2つ、ひとつは入れないくらいの熱さ、もうひとつは下が水(たぶん前日の大雨で増水している川の水が下から侵入するので)、上がお湯でかき混ぜながら漬かるという具合。
湯船の脇で、ガソリンコンロでラーメンなどを作りながら湯に漬かる。ビール片手に湯に入るもよいがラーメン片手(もとい両手か)もなかなか具合のよいことを発見した。
福渡温泉岩の湯
丁度よい湯加減。但し、人が多いので、精神的にゆっくり漬かっているゆとりがない。
また、川の対岸に旅館が並んでいるので興趣を削がれることおびただしい。
天狗の湯
岩の湯から下流へ250m程度下ったところにある。
支流沿いの少し奥まったところにあり、立木で囲まれていて、人工物がまったく見えず、非常に気持ちがよい。
1日目には、場所が分からなくて、2日目に探しながら行った。ちょいと吊り橋を渡ってから歩くので、人気は岩の湯より少ないか。湯船はだいぶ大きい。雨がほてった肌に快い。
JRバスの塩原温泉の終点のバスターミナルの脇に蕎麦屋(「助五郎」なる屋号だったかな。)があり入る。鄙には希な蕎麦(ざるが旨い)を食わせる。
老夫婦の経営のようだが、ばーさまが山で採ってきたという山椒の若芽を干して蕎麦の出汁で味付けたという突出が非常にビールに合う。
あまり旨いので翌日もここで蕎麦を食らい、土産までここの山椒にしてしまった。
そこから車で、奥塩原へ
狸の湯、寺の湯、中の湯
3つの風呂へ。寺の湯がもっとも気持ちがよい。
皆、混浴であるので期待をしていた向きもあったようだが、確かに、狸の湯には女人が多数いた。但し、親孝行を思いだしかねない方々ばかりであった。外からも湯殿の中が丸見えである。思わず小生は辟易となってご遠慮申し上げてしまった。
奥塩原は完全に硫化水素泉である。
塩原自然研究路
翌日は、塩原自然研究路なるものをたどって塩原温泉へ戻る。
途中、水芭蕉が咲くという沼に出くわすも、標高1200m程度なので花は遅いかもと考えていたが、イモの葉のばけもの(芋科植物の水芭蕉の花様の部分は葉である。成長した姿これも水芭蕉はもとの姿を思い出せないくらいのものである。)でもと探したが見当たらない。
もり青蛙の体に似合わない胴間声(森の動物には、詳しくないので,もり青蛙の鳴き声というのはもり青蛙の看板の表示からの推測である。間違ったら大勢いる動物学者たちに訂正してもらおう。)を聞きながら昼飯となった。残念ながら花にはまったく恵まれない山であった。
但し、梅雨の最中の森はいずれも美しい。特に、1mを越えて広がる雄羊歯(くさそてつに似る)の群生が見物であった。グリーンインテリアと下界で称されている羊歯類とは幽玄さの度合が全然違う。