フォーレの愛娘?

Lili Boulanger も別稿にしてしまいました。

別稿で,ナディア・ブーランジェのことを書きましたが,その妹で24才で早世した童顔のとんでも天才がいました。音楽一家の生まれで,ピアノ,ヴァイオリン,チェロ,ハープの初見演奏を得意とし,4歳の時から姉にくっつきパリ音楽院の講座にもぐり込み,19才で Faust et Helene でローマ大賞を受賞したという娘です。
将に,長生きしていれば私好みの作曲家になったのにと誠に残念です。

Reflets
Maria Riccarda Wesseling, mezzo-soprano
Pianist: Nathalie Dang
という歌の名品も残しています。幼い頃から死を意識するほど病弱なためか,風変わりでロマンチックな風と冥界からの風が合わさって緑野を吹き渡るような曲を書きました。私の表現が誠にお粗末(^^)ですが名曲です。特に,4小節から6小節までが和音の動きと歌のからみが美しい。歌うのは難しいでしょうが。

Les Sirènes
Antonii Baryshevskyi
Orpheus Vokalensemble
Michael Alber
これも天才の筆だね。
ドビッシー顔色なし。

フォーレも彼女の父(パリ音楽院の教師)と親交があり,小さい頃から彼女を可愛がり,自作の曲を彼女の家に持ち込んで演奏させたり,また,この9歳の娘がフォーレを歌うとか,彼女の父親が亡くなってからは,彼女たちの父親代わりもしたようですね。フォーレを父親代わりにしていたとはとんでも音楽環境ですね。この曲にもフォーレのメロディの匂いや色彩感がほんのりと香るように感ずるのは私だけでしょうか。
お鬚の天才も,女を口説くばかりでなく(^^),立派な天才児教育もしていたようです。

大編成の曲ではなく,以下のような piano 又は,piano & vocal の組み合わせの小さな曲に彼女の美質があるように思えます。若死にしたのが誠に残念
Prélude en Ré♭
Pianist: Moisès Fernández Via
この曲もドビッシー顔色なしだな。

Nocturne pour violon et piano (1911)
Savitri Grier (violin)
Richard Uttley (piano)
うーん,この調性豊かな曲なんか現代の作曲スタイルに通じますね。この曲は,Vn よりも横笛の方が似合いそうと思っていたら我が邦の方で立派な演奏するフルーティストがいました。

Parce Que J’ai Souffert
Heidi Grant Murphy(vocal)
Kevin Murphy (p)
冥界の風が少し弱まるときもあったような(笑)。冗談はともかく,何時死んでもおかしくないくらいな病弱さを常時抱えていたというのは痛ましすぎますね。
しかし,このソプラノもすごくよいな。ドン・アップショウに声がよく似ているとこも私好みだな。

Clairières dans le ciel
ハイジ演奏の曲をもう一曲 「空の開くところ<天国の入り口?>」 リリーは,自らの病弱さを開き直って<天国に近いのよね>と言っているのか(笑)。
これなんか将に天才の筆使いですね。

Sous-bois
Antonii Baryshevskyi
Orpheus Vokalensemble
Michael Alber
ピアノと合唱のこの曲も大変美しい。
不思議な美しさがある

Psalm 129 “Ils m’ont assez opprimé dès ma jeunesse” (1916)
Chorus: Monteverdi Choir
Orchestra: London Symphony Orchestra conducted by John Eliot Gardiner
大編成のオケと合唱の曲だが,これも非常に美しい。

なお,病床で姉に口述したという「ピエ・イェズ」が遺作とされていて高い評価をする者もいる。確かに私好みの半音階進行の曲だが,聞いてみてください。贔屓の引き倒しという感があって私には高い評価は理解しがたい。彼女にはもっとよい曲がある。