赤ワイン
この話題だと私より遙かに詳しい人がいくらでもいるでしょう。
たいした情報の持ち合わせもない。
40台までは,もっぱら日本酒を飲んでいたが,残念ながら先を行きすぎていた。今の日本酒ブーム(メーカー側のそれ)より前のバスに乗っていたのである。
そして50台の大台に乗る頃には,我が家系のしからしめるところにより「日本酒は甘すぎる」という舌になったので日本酒を飲むことをほとんど止めてしまったのである。
日本酒と言えば,まあ,新潟の酒を好む人が多く,私も大先達に勧められて「緑川」などを飲んだものだが,好みを言うとむしろ西のほんのり甘い酒が好きであった。
但し,今でも1番記憶にあるのが,青山墓地の南外れにある「鹿角」という,いぶりがっこ,とんぶりやきりたんぽという秋田料理を専門とする店で飲んだ「鹿角」という「常温で飲む」日本酒である。この酒も市販されてはいないだろう。「鹿角」酒造は,確かに存在するが常温で飲む酒を宣伝していないのである。
この酒は,あたかも「水のような」酒である。これを極く大ぶりの塗り物の器で飲むのであるが,40台で初めて帰りの道中を覚えていなかった経験をした(今では普通であるが^^;)という酒である。
酒の師匠は,もうひとりいて,湯島のあの EST! のオーナーバーテン氏である。満州帰りを口にしていたから大正生まれだろう。もう,既に引退されているが。
エストのバーテンダー氏からは,リキュールを教わった。
40台の若造が「ベネディクティン」を口にしたところ,もっとすごい酒があるぞと言われて飲まされたのが,シャルトリューズのヴェールである。
私は天国的甘さのリキュールと呼んでいたが,今では,AMAZONでも買えるが,その頃は目白の田中屋という洋酒屋まで買いに行くしかなかった。
まあ,甘い物が苦手な私が買ってきたこのリキュールはいまだに小さな酒庫に居残っている。
ワインは,レストラン巡りでいろいろな代物に巡り会った。初めの頃は,イタリアであればキャンティ,仏蘭西であればボルドーのものを飲んでいた(ここでも臆病者の習いが^^;)が,いずれももっぱら赤ワインは薬だと言いつつ飲んでいたものである。
レストランで勧められて飲んだワインで一番記憶に残っているのは,広尾のアラジンで川崎シェフから給仕されたワインがすさまじかった。青インクのような色をした代物で青インクと同じようにすさまじく渋い(青インクは飲んだことがないので比喩です:笑)ワインを飲まされた時であった。
なお,と同時かどうかは記憶にないが,給仕される数メートル先からすさまじい匂いのする,将にドブ川の底をさらったような匂いのするチーズを食わされたのもこの店である。それをワインの力で飲み込むと喉のあたりがかっと熱くなったものである。但し,これは川崎シェフの腕を貶める意味ではなく,彼の作った料理は,本格的なフレンチでたいそう美味で,大分通ったものである。
そのうちレストランで美味いワインに出くわすとエチケットをというキザな言い回しでラベルを要求するようになったが,何のことはない酔いに任せると銘柄を忘れてしまうからであるが,そのうち意味がないことに気がついた。
名のあるレストランで飲むワインは,日本ではまず市販されていなかったのである。要するにまっとうなレストランのオーナーは,ワインを現地で買い付けてくるからである。
そうすると店と同じワインを手に入れようと思っている食い意地の張った奴は,ラベルをもらってもほとんど意味がないことに気がついてそのうちやめてしまった。
それで家飲みのワインを探すようになったが,嵌まったのがナパ・ワインで,Girard という酒造メーカーがジンファンデルから作った同名の赤ワインであった。
但し,さほど高価なワインという物ではない。
ただ,べらぼうに美味かった。但し,作り手が亡くなるまでだが。それでワインも天才が手作りするものに優るものはないと気づかされたのである。音楽と同じですね。
その後は,ダックホーン酒造のジンファンデル種から作られた赤ワインなぞを飲んでいるが Girard に匹敵するような酒は時々しか造れてはいないようである。
閑話
駄ワインを美味くする秘法
2リットル位の空のペットボトルに100~200mmくらいの赤ワインを入れて栓をして激しく振るのである。要は,しっかり空気を混ぜるのである。駄ワインが驚くような味になる。まあ,相対的な話ではあるが(笑)
安直なデカンタである。
もうひとつの駄ワインの飲み方だが,風を引いたときに赤ワインを暖めて飲むのもよい。結構,味も良いし。
私が良くやるのは赤の駄ワインでサングリアを作り,これに芋焼酎をどぼどぼ加えて(なんたる代物か),ストーブを点けても寒い山荘で,好みの CD を鳴らしつつ,ちびちびとやるというやり方である。これに良いエポワスをクラッカーかパンにつけて摘まみ,ちゃんと煮干しから作った熱い味噌汁(世界三大スープのひとつだ)でも飲めば夕食もいらない。翌朝が最悪だが(笑)
なお,客がいればバーニャカウダかチーズホンデュかもどき常夜鍋でも作ってお終い。